『ルール』とは何か-前編-
2022年2月18日- PR戦略プランニング
- オピニオンリーダーリレーション
- ソーシャルコミュニケーション
- パブリックアフェアーズ
ピーアールコンビナートでは、グループ会社のオズマピーアールとともに、自社の事業にかかわるルール形成をワンストップでサポートするサービス「ルール形成コミュニケーション」(パブリックアフェアーズ)を提供しています。本コラムではプロジェクトメンバーの井上が、そもそもルールとは何なのか、を2回にわたって、掘り下げて考えていきたいと思います。
「ルール」(規則)とは、『行為や事務手続きなどが、それに基づいて行われるように定めた事柄、決まり』(小学館「デジタル大辞泉」)のことを言います。
ビジネスとルールは密接に関係しています。テクノロジーの進化に伴い、既存の法制度では適用できない新たなサービス・ビジネスが拡大しています。しかし政府による法律のアップデートが追い付かないため、新規サービスの上市が出来ないなど、イノベーションの妨げになるケースが増えてきています。他方で、ディスラプティブなサービスによって従来の商慣行・ビジネスエコシステムやコミュニティが破壊されるケースも散見され、拙速なイノベーションを防ぐルールの維持が求められるケースもあります。
ここでパブリックアフェアーズチームが考える「ルール」の定義をご紹介します。
ルールというと、一般的には法律のことと考えがちですが、我々はルールをもう少し広く定義し、3つのセクター(領域)に分けています。
具体的には、
①法律などに代表されるポリシーセクター(政治領域)
②調達ガイドラインなどに代表されるビジネスセクター(経済領域)
③倫理や社会規範、世論等に基づく新しい社会課題(=イシュー)に代表される
ソーシャルセクター(市民領域)
という分類になります。
私たちは「ルール」=法律だけを指す言葉ではないと考えています。法律のようなポリシーメーカーが定める強制力のあるものだけでなく、イシューにも秩序形成力があり、事実上のルールとなり得ます。
パブリックアフェアーズにおいては、ポリシーメーカーが定めるルール(=ハードロー)を重視しがちですが、我々はコミュニケーションの専門家として、業界ルール(=ソフトロー)やビジネス慣習などの重要性にも着目しています。
しばしば言われる事ではありますが、多くの日本企業にとってポリシーセクターが定める「法律」はビジネスにおける与件・前提条件であり、変更可能なものとしては捉えていません。しかし、テクノロジーの進化に伴って、既存の法制度ではカバーできない領域が拡大する中、リアクティブではなくプロアクティブにルールをつくる立場になることで、ビジネスにとってパワフルなインパクトを及ぼします。
しかし前述の通り、人々の行動を制約する決まりは「法律」以外にも存在し、社会に大きな影響をもたらしています。
政府だけでなく、企業もルールをつくっています。
業界団体が集まって定める自主規制や、業界内に存在する独自の商慣行・取引慣行はビジネスセクターによるルールと言えます。法律でないのだから強制力はないのでは、と思いがちですがそんなことはありません。
貿易不均衡の解消のために行われたかつての日米構造協議では、単なる民間の取り決めに過ぎない日本の商慣行・取引慣行を、日本市場の閉鎖性を示す「構造障壁」として、アメリカ側は是正を求めていました。つまり、民間の自主的な取り決めに国家が振り回されるほど、「事実上の」強固なルールを形成していたのです。
企業間連携やロックインといった事業戦略もビジネスセクターによるルールづくりのひとつと言えます。技術や特許を公開し、顧客や競合と協調し企業間連携(コンソーシアム)によるビジネスエコシステムを構築するやり方。他方、技術を公開せず、顧客を自社技術に依存させるロックイン戦略により、顧客との間で“意図せざる”エコシステムを構築するやり方。どちらも、法律と違って強制力がないため、デファクトスタンダード(事実上のスタンダード)を目指すための方法論であり、ビジネスセクターによるルールづくりです。
written by
PR3部 コミュニケーション・プロデューサー 井上 優介